【キッチン】
向かい側のドアを開けると何かがキラッと光った。
『…っ!』
セルフィは思わずアーヴァインの腕をぎゅうと握りしめた。
「大丈夫だよセフィ。光ったのは金属のボウル」
その声に、セルフィはそっと目を開けた。ロウソクの光の届く範囲を見渡せば、タイル貼りの台と横にシンクらしきものが見えた。近くにはラベルの貼られた、小さな空の瓶も幾つか見えた。だが、いくら金属とはいえ、ここに残された他の調理器具は埃で艶をなくしているのに、不自然にそのボウルだけ光っていた。アーヴァインは直感的にそっとボウルを持ち上げてみると、その下に“紙”が置いてあった。
目的の物を手に、さっさとこの部屋を出るべくドアノブに手を掛けた時、アーヴァインがホッとしたように呟いた。
「光ったのがナイフとかじゃなくて良かったね。そっちだったら、僕もきっと怖かった」
「アービン〜」
セルフィの声は涙声だった。
折角、2枚目の紙も手に入れて少し安心したのに、アーヴァインのひとことでまた余計なことを考えてしまった。部屋を出た後ならまだしも、まだ部屋を出ていないこの時点での油断は、映画とかではお決まりのパターンで必ず後ろに何か居る。
そして……。
「ごめん、セフィ」
セルフィは謝るアーヴァインを放って、駆け出したい衝動に駆られた。けれど、しっかりと握っている腕が温かで、最も安心出来る場所だということの方が遙かに上回っていて、駆け出すのは何とか踏みとどまった。
「次で最後の部屋だよね。左隣の部屋と向かい側の部屋とどっちに入る?」
【左隣の部屋へ入る】
【向かいの部屋へ入る】
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