【バスルーム】
「それじゃ、隣の部屋」
セルフィがそう言った途端、部屋の中から「キャー」という悲鳴が聞こえた。
「アービンっ!」
セルフィは反射的にアーヴァインの腕を強く掴むと、隠れるように大きな身体の後ろに回った。
「セフィ、大丈夫だよ」
アーヴァインの優しい声に、ほんの少し心臓の動悸が和らいだ。
「向かい側の部屋にしようか」
アーヴァインが労るようにセルフィの肩を抱き寄せた時、目の前のドアがギィと音を立てた。
「お、アーヴァインか」
ゼルと半泣きの三つ編みちゃんが出てきた。
「大丈夫? 三つ編みちゃん」
自分も心臓がバクバクする程驚いたが、セルフィはそれよりも泣いている三つ編みちゃんの方が気になった。
「はい、なんとか。鏡に写った自分にびっくりしちゃったんですよ……」
涙の溜まった瞳で、恥ずかしそうに三つ編みちゃんは笑った。
「そうなんだ、でも怖かったよね」
セルフィが俯き加減の三つ編みちゃんの手をそっと握ると、小さな声で「でもゼルさんが、大丈夫だって抱き締めてくれたんで、怖くはなかったんです」と教えてくれた。何だかんだいってもゼルもちゃんと彼女の事を大事にしてるんだな〜と、セルフィは微笑ましく思った。
「ここで最後だろ? 待っててやるから、“紙”取って来いよ」
更にありがたくもゼルは、セルフィ達にそんな申し出をしてくれた。
外でゼル達が待っていてくれると思うと心強かった。ただ三つ編みちゃんの言った事をうっかり忘れていて、セルフィも入ったバスルームにあった鏡に写った自分に驚いて、またアーヴァインに思いっきりしがみついてしまったけれど。
それから後は、ゼル達と一緒だったという事もあり、またゼルの喋りはセルフィに恐怖心を忘れさせる程楽しく、気が付けばあっという間に屋敷に帰ってきていた。
【ノーマルED】
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