【子供部屋】

 右隣のドアを開けた途端、ごんと何かにぶつかった。
「いってーな、何だよ」
 上から降ってきた怒りの声が誰かは、顔を見なくても分かった。
「ごめん、サイファー。まさか、そこに立っているなんて思わなくてさ」
「ふん」
 アーヴァインには一瞥しただけだったが、サイファーはセルフィがこの手のものが苦手なのを知っていたので、心配気な顔で彼女を見ていた。
「一緒にいくか?」
 パッと見ただけで、少なからず怯えているのが分かったのだろう、セルフィに掛けたサイファーの声は実に優しかった。
「そうね、その方が色々安全そうだし、そうしましょう」
「色々って何だよ」
 セルフィには自分から「一緒に行こう」と言ったにも関わらず、サイファーはキスティスの賛同の言葉に不満を露わにしていた。ついでに、アーヴァインの表情もあまり嬉しくなさそうだったが、セルフィはそんな事にはちっとも気が付かなかった。あまつさえアーヴァインが止めなければ、セルフィは差し出されたサイファーの腕を取って歩き出しそうな程だった。
「絶対ここで待っててね」
 そう念を押してから、セルフィはアーヴァインと共に部屋の中に入った。
 他の部屋に比べて少し小振りな家具類に、ここは子供部屋らしいということが分かった。そう言えば壁紙も古ぼけてはいるが、可愛らしい絵柄だった。そのせいか、この部屋はどこか安心感を覚えた。ベッドの近く、剥き出しになっている小さなベンチチェストの上に“紙”は置いてあった。それを手にすると、急いでサイファー達の所へ戻る。
 サイファーは律儀にも、セルフィに言われた所でちゃんと待っていてくれた。
 そして、ここでサイファー組と行動を共にした事は実に正解だった、アーヴァインが悔しく思う位に。サイファーは夜の眷属の者達ですら、簡単にねじ伏せてしまうかのような頼もしさだった。お陰でセルフィは、そこから先大して怖い思いをする事なく、肝試しをクリアする事が出来た。








【ノーマルED】

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