「うーん、どうしよう。皆が来るとなると、少し食堂で何か調達しないと無理だなー」
アーヴァインはセルフィのメールを受け取ってから、大慌てで今夜の献立に奮闘していた。二人分の食事しか考えていなかったので、6人が集まるとなると食材が足りない。サンドイッチか何か食堂で調達しようかと考えていた時、来客を知らせるインターフォンが鳴った。モニターを見ると、大きな袋を抱えたセルフィの姿があった。
「セフィ、すごい大きな荷物だね」
ドアを開けると、セルフィが両手一杯に荷物を抱えて入って来た。テーブルに置いた時どさりと音がした事から結構重そうだった。
「タコヤキ器と材料、たくさん持ってきたで〜」
「助かるよセフィ、僕の方はパスタとマリネ位しか用意出来そうになったから」
「ごめんね、アービン。急に皆で集まる事になって」
早速エプロンを着け、タコヤキの準備に取りかかりながらセルフィが言った。
「気にしないでよ、全員が集まれるなんて滅多にない機会だし、僕も楽しみだよ」
そう言うアーヴァインの瞳がちょっとだけ残念そうだった。セルフィは気が付かなかったけれど。
アーヴァインはパスタとマリネを、セルフィはタコヤキを、各々が出来上がった頃、仲間達が次々と集まって来た。
リノアとキスティスがケーキとクッキーを持参で。ゼルは両手に持てるだけのスナック菓子。スコールまで食べ物を持参していた。なんでも、今朝空輸で届いたとか。それにはカードが添えられていて、『父ちゃんから、愛情たっぷりの手作りおにぎりだ、味わって食べるんだぞ〜』との事。見ると、三角形とも俵形とも球形とも取れぬ、いびつな形のおにぎりがみっちり保冷ケースの中に並んでいた。それをポツポツと皆に話して聞かせてくれたスコールの、この上なく迷惑そうな表情に、3人は爆笑し、残りは苦笑した。
アーヴァインの部屋はさながら宴会のような盛り上がりだった。お酒も入っていないのに、大半がナチュラルハイで。肝心のイデアの家建て直しよりも、久し振りに全員が集まった事で他の話になる事の方が多かった。それでも、夜中までには、全員がイデアの家建て直しに賛同し協力する事を約束して、楽しい時間は終わろうとしていた。
「それじゃ、この件は俺から学園長に提案しておく」
「お願いね、スコール」
キスティスの言葉に、他の皆も頷いた。
「そろそろ、帰ろっか」
リノアが立ち上がり、ゆっくりとドアの方へ向かって歩きだす。
「またこうやって集まろうぜー」
ゼルは勢いを付けてぴょんと立ち上がる。
「今度は、イデアの家で集まれるといいねー」
「あ、セルフィ悪いんだけど、後片付けお願いするねー」
皆と一緒に帰ろうとしたセルフィの肩に優しく手を置いて制しリノアは言った。
「片付けなら、俺たちも……」
言いかけた、ゼルの腕を「帰るぞ」と珍しく強引に引っ張ってスコールはドアから出た。
「セルフィ、ごめんなさいね。これ、お詫びとプレゼントを兼ねて、私とリノアから」
そう言って、キスティスは綺麗にラッピングされた小振りな袋をセルフィに渡すと、皆を追い出すようにしてアーヴァインの部屋を後にした。
「うーーん みんな何か変」
キスティス達の行動が理解出来ずセルフィは怪訝な顔をするばかりだった。一方、アーヴァインは“仲間達の意図”をちゃんと受け取って皆に感謝した。
「さ、セフィ片付けちゃおうよ」
「そーだね、むーーっとしてても片付かないもんね」
セルフィは気持ちをサクッと切り替えて、片付けに専念する事にした。
皆はじけていたようで以外と行儀が良かったらしく、片付けはそう時間も掛からず終了した。
※-※-※
片付けが終わって、セルフィはソファに手足を投げ出すようして一休みしていた。
「あ、キスティスとリノアのプレゼントっ何かなー」
さっき貰った物を思い出し、そっと袋を開けてみる。白く手触りの良いコットン生地に、綺麗な水色の縁取りとワンポイントで花の刺繍が施してある下着の上下セットだった。
「わ、可愛い」
思わず声に出して呟いていた。
「セフィ、お疲れさまー、何が可愛いんだい?」
アーヴァインは砂糖とミルクをたっぷりと入れたコーヒーをセルフィの前に置きながら、彼女の手に持っている物を見て問いかけた。
「キスティスとリノアに貰った物〜」
流石に下着とは言えなくて、セルフィはそうごまかした。
「今度僕にも見せてくれるかな〜」
ぬいぐるみか何かだと思ったのか、アーヴァインは屈託無く笑っていた。言われた当のセルフィは、機会があれば見せる事は出来るけれど中身が中身なだけに、どう答えていいか分からずただ頬が赤くなっていくばかりだった。それを察してかどうかは分からなかったが、アーヴァインはそれ以上何も言わなかった。
セルフィはそのことにホッとして、二人の友人からのプレゼントの入った袋をそっと下に置くと、目の前で美味しそうに湯気を立てているコーヒーに口をつけた。セルフィ好みの甘さに整えられ、少しほろ苦い温かい液体が、ゆっくりと心と体に広がり、アーヴァインの言葉で少し慌ただしくなった心臓が、再び落ち着きを取り戻していくのを感じた。
ふと気がつけば隣でアーヴァインが何かごそごそとしている。それがなんとなく気になって、そちらに向いてみると、何やら赤い変な形の物体を弄っているようだった。
セルフィの視線に気が付いたのかアーヴァインが「これ何だろうね、ゼルが忘れていったみたいなんだけど変な形〜、こうするとでっかいリボンみたいだ」と、頭の上にそれを載せておどけてみせた。
言われてみれば確かに大きなリボンのように見えなくもないかな、とセルフィも思った。
「セフィに僕をプレゼント〜……なんて…ね。あはははーー」
アーヴァインは咄嗟に口をついて出たのが、シヴァをも凍りつかせるんじゃないかと思うほど極寒の台詞だと気がついたが、自分の口であっても途中で止めることは不可能だった。出来たことと言えば語尾を小さくして笑ってごまかすくらいで、その後、あまりの寒い台詞にセルフィに失笑されるだろうと確信して、心の中で項垂れた。
「うん、ありがとう」
「そうだよね、いらないよね」
反射的にそう答えていた。だがアーヴァインの耳に届いた言葉は、なんだか予想していたものとは違ったような気がして、思わずセルフィの方を見ていた。
セルフィは確かに笑っていたが、それは失笑とは明らかに違っていた。気のせいか、少し恥ずかしそうな笑顔のようにも見えたりする。
『アレ? もしかして……』
アーヴァインは自分の考えを確かめたくて、もう一度聞き返してみたい衝動に駆られたが、聞き間違いだったらまたへこむしとグルグルとしばらく考えてはみたが、やっぱりちゃんと確かめたいという結論に至った。
「セフィ、良く聞こえなかったんで、もう一回いい?」
もう自分でも頬の筋肉がヒクヒクしているのが分かるくらい、変なイントネーションだと思った。
「うん、ありがとう」
さっきより、少しはっきりとした声でセルフィが答えた。アーヴァインの頭から“変な形のリボン”がぽとんと落ちた。アーヴァインはその言葉の意味をものすごい勢いで考えた。
『えーと、おちつけ、おちつけ、僕。自分の思っている通り、僕自身を受け取ってくれるという意味なのか、それともこのリボンもどきが欲しいのか……うーん』
何故そこでヘンテコリボンを欲しがっているという考えになど至ったのか、ちっとも、全然、全く落ち着けていない。尤も、この状況で落ち着けという方が無理な話ではあったが。
結局、セルフィの言った言葉の真意は全く分からず、表情でも見れば分かるだろうかと、アーヴァインはセルフィの方を再び見た。
互いの視線が交錯した瞬間、セルフィはふいっと横を向き、その頬はみるみる朱に染まっていくのが見て取れた。そこに至ってようやくアーヴァインは、セルフィの言った意味を理解することが出来た。
そしてセルフィには悪いけれど、もし間違っていたとしても、今日はこの腕に閉じ込めてしまいたいと思った。今まで何度か彼女に触れたいと思って、それを試みたけれどいつもするりとかわされてきた。今それを口にして拒絶されてしまったら、きっとものすごくへこむことになるんだろうけど。それでも今日こそは、という想いはちょっと抑えられそうにない。
ずっとずっとセルフィが好きだったのだ。
気の遠くなるような時間を待ってようやく手に入れた。けれどまだ不安なのだ。ガーデン生あこがれのSeeDであり、学園祭実行委員など自ら積極的に学園活動もするし、明るくとっつき易い性格の彼女は、男女問わず人気がある。恋人という特別ポジションを得ても、日々の不安は尽きない。だから少しでも自分を安心させる要素を増やしたいのだ。
誰かに盗られる前に、セルフィを自分のものにしたい。我儘だと罵られても、そうしたいのだ。
アーヴァインは一度ぎゅっと拳を握り、こくんと口の中を唾を飲み込んでから行動に移した。
ふわっとセルフィの頬に手を添える。触れた瞬間彼女がピクッと震えたのがアーヴァインの手に伝わった。片方の手も反対側の頬に添えて、顔を近づけるとセルフィは静かに瞳を閉じた。軽めのキス。顔を少し離すと、少し潤んだような熱っぽい瞳に見上げられて、アーヴァインはようやく安堵した。
それが合図だったかのように、今度は熱く深く口づけを交わす。何度も何度もお互いを確かめ合うように。アーヴァインの唇が、セルフィの耳朶を軽く啄み、更に首筋にキスをしながら下へと移動していく。左手の指はセルフィの背骨をなぞるように動いていた。セルフィの背を痺れるような感覚が、アーヴァインの指の動きに合わせて移動し、その度に肌身に波紋のように広がっていく。
「待って、アービン」
気が遠くなっていきそうなのを必死に耐えて、セルフィは告げた。一方アーヴァインはここに至って思わぬ制止の声に愕然となった。
「ごめん、もう待てない」
誰よりも大好きなセルフィの頼みではあったけれど、アーヴァインは今この時だけは聞き入れることが出来ず、そのままセルフィに触れるのを止めなかった。
「違う。嫌なんじゃなくて、ちょっとだけ待って〜」
懇願するようなセルフィの声に、アーヴァインはようやく動きを止めた。
「ごめんね、あのね、今日バラムの街に行って、潮風に当たって、ちょっと腕とか髪とか気持ち悪くて。だから、シャワー浴びさせて」
アーヴァインはその言葉にホッとした、拒絶されたのではない。セルフィの頼みは女の子なら尤もだと思った。
「分かったいっておいで、それとも一緒に入る?」
珍しく意地悪を言う。
「それはイヤ、絶対にイヤ! 恥ずかしすぎる」
真っ赤になって抗議するセルフィの貌も、今のアーヴァインにとってはとても可愛らしいと思うだけだった。
「この前預けた布バッグ、どこにある?」
「ん、ちょっと待って」
アーヴァインは棚の中から預かった袋をセルフィに渡した。セルフィはそれを受け取ると、足元に置いていたリノア達からのプレゼントも一緒に持ってバスルームに向かった。バスルームのドアを開けようとした時アーヴァインの方をくるりと振り返る。
「やっぱりアービンが先に行って」
まずないだろうとは思ったけれど、もし途中でアーヴァインがバスルームに入って来たらと想像して、セルフィは先に入るよう促した。アーヴァインは特に嫌がることもなく「了解〜」と言って、着替えを持ってバスルームに入っていった。
『あの布バッグって、こんな時の為だったのかー。という事はこの前来た時には、既にセフィは……』
アーヴァインはごしごしと身体を洗いながら、そう思うとどうにも頬の筋肉がゆるんでしまった。今すぐ「ありがとう」と伝えたい気分だったが、かなり恐ろしい結果になりそうだったので、ぐっと堪えて自分を磨くことに専念した。
『とうとうきちゃった……』
ソファに座ってアーヴァインが出てくるのを待ちながらセルフィはぼそっと呟いた。心臓がドクンドクンといつもより早く脈打っているのが分かる。はぁと溜息をついて、お泊まりセットとリノア達からのプレゼントを抱えたままごろんとソファに横になる。
本当はまだちょっと逃げ出したい。アーヴァインのことは好きだ。ちゃんと男として好きだ。そういう関係になるのがイヤってわけでもない。恋愛に於ける当然の段階の一つだと思う。アーヴァインに抱きしめられるのは心地いい。自分だってアーヴァインに触れてみたい、と思ったことはある。むしろそうなるのならアーヴァイン以外はイヤだとも思う。
でもちょっと怖くもある。身体的にも、精神的にも。一度そうなってしまうと、そっち優先で気持ちが置いて行かれるんじゃないか、とか。今までみたいにアーヴァインは自分のこと好きでいてくれるんだろうか、とか。つい不安が広がる。
ただ、今ここで逃げ出してしまったら、もう二度とアーヴァインとは会えないような気がして、セルフィはまた一つ大きな溜息をついた。
セルフィがグルグルと考えている内に、バスルームへ通じるドアの開く音がした。アーヴァインがこちらに近づいて来る足音が聞こえる。今、アーヴァインの姿を直視するにはあまりに恥ずかしくて、セルフィは咄嗟に目を閉じた。
「セフィ、バスタオル新しいの置いといたから使って。――じゃ後で」
セルフィの耳元で、セルフィの聞いたことないような低さと甘めの声でそう囁くと、シャンプーの香りを仄かに残してアーヴァインは寝室に消えた。アーヴァインが去ったのを確認すると、セルフィはのろりと起きあがった。
アーヴァインの声が未だに頭の中で木霊している。なんていうか、あれだけで身体の芯がぞくっと震えた。これから自分がしようとしていることを体感するには充分すぎたというか、余計に逃げ出したくなったというか――――。
「ここで逃げてもなんにもならない」
セルフィは自分にそう言い聞かせてバスルームに向かった。
バスタブにお湯を張りながら、セルフィは持って来たお気に入りのバスオイルを数滴垂らした。
大好きな香りが室内を満たしていく。
潮風で居心地の悪かった身体と髪を洗い、バスタブにゆっくりと身体を沈める。湯気とともに立ち昇るバスオイルのフルーツの香りが柔らかくセルフィを包み、躰の内側から心も解きほぐしていくようだった。
身体もすっかり温まり、のぼせてしまう前にお湯から上がる。髪と身体を拭き、まさかこんなに早く使う事になるなんてと思いながら、リノアとキスティスにプレゼントされた下着を身につける。それは実にセルフィにぴったりだった。華美過ぎず清楚で可愛らしい。オフホワイトのコットンのキャミソールと短パンの夜着を着、ドライヤーで髪を荒乾きさせ、歯磨きを終えるとセルフィはバスルームを出た。
ほんの少し前、仲間達と楽しい一時を過ごしたとは思えないほど静まりかえった部屋。
視界の端に外へと通じるドアを捉えた。けれど、セルフィは吹っ切るように照明を落として、ゆっくりと寝室へ向かった。
寝室のドアをそっと開ける。明かりの抑えられた室内は、さっきまで明るい場所にいたセルフィには一瞬中がよく見えなかった。徐々にに目が慣れてくると、ベッドに横たわっているアーヴァインの姿が見てとれた。入って来たセルフィに気がついていないのか、全く動く気配はない。
そうっと近づいてみると、瞳は閉じられ、規則正しく胸が上下していた。もう眠ってしまったのだろうか。確かめるように顔を近づけてみる。それでも起きる気配はなかった。ホッとしたような残念なような気持ちで、ベッドの反対側へ回ろうと、セルフィがくるりと身体を反転させた瞬間、くんと腕を掴まれた。振り返ると、上半身を起こしたアーヴァインがどこか切なげな瞳でセルフィを見ていた。
「――セフィ」
そう言った刹那、アーヴァインは掴んだセルフィの腕を引き寄せ、倒れ込んだ彼女の身体を抱きしめると唇を重ねた。長く塞がれた唇にセルフィは息苦しさを覚え、苦しいとアーヴァインのTシャツを強く握ることで訴えた。ようやく解放され、息を一つついた所で、ぐるりとセルフィの視界が回った。アーヴァインの膝の上に乗るように倒れ込んでいた身体は、彼によって今度は組み敷かれる形になっていた。
「セフィ、大好きだよ」
熱を含んだ瞳で真っ直ぐにセルフィを見つめている。
「うん、あたしもアービンが大好き」
少し微笑んでセルフィはそう答えた。もう逃げない。さっきの切なそうな瞳が、彼のSeeD就任パーティの時の淋しげな表情と重なって見えた。もうアーヴァインにあんな表情(かお)をさせるのは嫌だ。
だから……――。
「セフィ…」
熱に浮かされたように低く呟くと、アーヴァインはセルフィの首筋に顔を埋めた。
セルフィは静かにアーヴァインの頭をかき抱くと髪にキスをして応えた。
深く、熱く、明けがたい夜の刻が流れ始めた。
※-※-※
「ん…」
誰かが優しく髪を撫でている感触に目が覚めた。まだ眠りの中から戻りきらない瞼を、意志の力で開けてみる。自分の方に向かって微笑んでいる、よく知っている整った貌がセルフィのすぐ間近にあった。
「おはよう、セフィ。大丈夫?」
その言葉に、ものすごい速さで昨夜あったことがセルフィの頭の中を駆け巡った。あまりの恥ずかしさに、身体の向きを変えようとしたけれど、行く手を遮るようにアーヴァインの腕に阻まれる。
「セフィ、誕生日おめでとう」
「あ…」
「もしかして、忘れてた?」
「うん、忘れてた。……ありがとう」
にこにこと笑いながら、もう一度「おめでとう」と言って、セルフィの頬にキスをしてくれた。そして唇にも。止まることを知らないようなキスの雨を受けながら、セルフィは酷く喉が渇いていることに気がついた。
「アービン、ごめん、水が飲みたい」
アーヴァインを優しく制して、ベッドから降りる。
キッチンへ向かう途中、鏡に写った自分に違和感を感じた。数歩下がって鏡を覗き込む。胸元のキャミソールの端から、ひとつ緋色の跡が見えた。
「これって……」
身体にはっきりと残る違和感とこの緋色(しるし)、それは紛れもなくアーヴァインに愛されたという事実を思い起こさせ、セルフィの頬を熱くさせた。
少し前まで変わってしまうことを恐れていた。昨日の自分とは確かに違う。けれど、アーヴァインを好きなことはちっとも変わっていない。アーヴァインも何も変わっていない気がした。それだけで十分だと今は思う。
冷たいミネラルウォーターで喉を潤しながら、「忘れられない誕生日になっちゃったな〜」とセルフィは微苦笑した。
外はとっくに明るくなっている。
かと言ってこのまま起きてしまう気分にもなれない。もう少し眠ることにしようか。まだちょっとアーヴァインにくっついていたい。そう思ってセルフィは再び寝室のドアを開けた。
にっこりと笑うアーヴァインに手を引かれたセルフィには、眠らせて貰えるかどうかはアーヴァイン次第だということはまだ分からなかった。
END